カウンターの内側には若いボーイが一人居るのですが、ボックス席のお客につまみを用意した後はカウンターの逆の隅に陣取り、貴志と香奈とは距離を置いて気配るのでした。 30過ぎと見受けられる香奈は整った顔をした美人で、清純そうに見える小顔のどこかに愁いを漂わせている中肉中背の女性でした。 その愁いが未亡人が故に醸し出されているのか、香奈が持って生まれた雰囲気なのかは分からないのですが、それが香奈をより魅力的にしていることは間違いありませんでした。 貴志は香奈の妖艶さに惹き付けられるのでした。 香奈は空色の中にあざやか花柄がプリントされた半袖ワンピース姿で、ふんわりと広がった袖口から漏れ出ている丸くて白い腕が中年女の艶やかさを漂わせていました。 香奈の衣裳はクラブで働くホステスの衣裳としては非常にシンプルで地味です。 このクラブで働く若いホステスの派手な着飾り様に比べると、そのシンプルさと地味さが目立つのでした。 が、その服装が香奈を清楚で上品な女に見せているのでした。 香奈も先ほどのアケミやリサと同じく、貴志のウィスキーを水割りにして飲むのでした。高いジュースだとかシャンパン等を飲みたいと強請らないのが気に入り、貴志は安心できるのでした。 「宇佐美貴志さんね・・・好きなお名前だわ・・私は香奈です、よろしくね・・・」 貴志が自己紹介を兼ねて、名詞を香奈に手渡し、香奈も名詞を貴志に差し出したのでした。 「名前が褒められたの初めてです、嬉しいなぁ・・・」 「あら、そうですか・・・いいお名前ですよ、私は好きだわ・・」 「ありがとうございます・・・ところでこのお店の名前はユニークですね・・・看板見た時は驚きました・・・」 貴志は香奈の身の上話を少し聞きたいのでした。こんな美人が未亡人であることに興味を惹かれ、未亡人になって何年ぐらいになるのかにも興味があるのでした。 もうかなり長く一人暮らしをしているのであれば、香奈がどのような性欲処理をしているのかがとても気になるのでした。 貴志の男の助平心が湧くのでした。 「そうね、かなりインパクトの有る名前ですよね、初めてお見えになるお客様は大体、この名前に惹かれていらっしゃるみたいです・・」 「インパクトが強すぎますよね、僕もすぐ入って見る気になったしまいましたよ・・・」 「男の人は皆さん未亡人には弱いみたいですねぇ・・宇佐美様もよからぬことを考えたりしたんでしょう・・・」 「そうですね、僕も未亡人には惹き付けられますね・・・」 「やっぱりね、どうしてなんですかね・・・未亡人となるとある程度年のいった女になると思うんですが・・・うちの店にも若い子が沢山いるし、若い子の方がきれいですのに・・・未亡人になぜ興味を持つんですかねえ、男の人は?・・・」 「そりゃ、未亡人には魅力があるからですよ・・・」 「あら、魅力があるんですか未亡人には?」 「ええ、ありますよ、その魅力に男は惹き付けられるんですよ・・・」 「若い子の方が溌剌としていて美しいのに・・・おかしいのね男の人は・・」 「若い人が持って無い魅力があるんですよ・・・若い人より惹き付けるものを持ってるんですよ未亡人は・・」 「そうですか・・・私には分かりませんけど、男の人は分かるんですね・・・白状しますけど、私も未亡人ですけど、そこらにいるおばさんと変わりないでしょう?」 「さきほど、アケミさんとリサさんから聞きました、香奈さんが未亡人だってことを・・・」 「まぁ、あの子たち・・・おしゃべりねぇ・・・」 「いいじゃないですか、香奈さんは未亡人で男を惹き付ける魅力的な女性なんですから・・・」 「だけど、男の人が感じる未亡人の魅力ってどこにあるんですか?・・私が未亡人だから未亡人の魅力を是非聞かせて欲しいわ・・私にもその魅力があるのかしら・・・」 「ありますよ、大有りですよ・・香奈さんは本当に魅力的な女性ですよ・・・「香奈さんは、落ち着いておられるし、女の魅力が全て揃った人ですよ・・・」 「宇佐美さんに褒められると嬉しいけど・・落ち着いていると言われても・・・私はもう32歳ですからね・・・若い子達と一緒にキャアキャア騒げない年なのよ・・・それに女の魅力が揃ってるって、どう言うことなのかしら・・・」 「女としての魅力ですよ・・・」 「だから、普通の32歳の女性と32歳の未亡人とどこが違うんですか?」 「それはちょっと答えにくいんだけど・・・」 「話してくださいよ、ここまで話したんだから・・私も知りたいわぁ・・それと、男の人が未亡人に惹かれる理由も聞かせてくださいよ・・・」 ここまで香奈がこの話題に興味を持ち、追求してくるとは思っていなかった貴志は返事に窮するのでした。 FC2 ブログランキング 人気ブログランキングへ にほんブログ村 |