別荘の車庫は母屋の一部として建てられており、車庫から直接母屋に入れるのでした。俊一は車から降りて車庫の明かりを点けてからシャッターを閉め、車の助手席のドアーを開けて女性を車から降ろしました。 「ちょっとここで待っててくださいね・・・タオルを持って来ますから・・」 俊一は言ってすぐ母屋へのドアーを開けて母屋に飛び込み、タオルを取りに走りました。 俊一はバスタオルと普通のタオルを手にして戻ると、女性にバスタオルを渡して体を拭くように勧めました。そして女性のハンドバックを引き取り、普通のタオルで雨に濡れたハンドバッグを拭いたのでした。 「さぁ、お上がりください・・・」 女性が雨で濡れた毛髪、Tシャツ、スカートそして膝からくるぶしまでをバスタオルで拭くのを待って俊一は女性に家に上がるように勧めました。 「そうだ、お互いに自己紹介しておきましょうよ、名前が分からないと話がし辛いですよね、僕は宮田俊一と申します・・・あなたのお名前をお聞きしていいですか?」 「私は高山美沙です・・ご迷惑をお掛けして申し訳ありません・・・」 「高山美沙さんですね・・・ご迷惑だなんて、気を使わないでくださいよ・・困ったときはお互い様ですから・・・」 「本当にすみません・・・」 「ほら、また気を使う・・・そうだ、高山さん、シャワーを浴びませんか・・濡れたままじゃ身動き出来ないでしょうし・・・風邪を引いたら大変だから・・シャワーで体を温めなさいよ・・・」 「でも・・・私、着替えを持っていませんから・・・」 「だけど、濡れた衣服を着たまま乾くのを待つことなんかできないでしょう・・・シャワーを浴びてる間に洗濯をして、洗濯機の乾燥機能を使うのがベストですよ・・・」 「洗濯機で乾燥するのに2時間はかかるでしょう?・・・」 「仕方ないですよ、高山さん・・・その間、バスタオルで体を隠しておくか・・・そこまで濡れてしまったんだから仕方ないですよ・・・・あぁ、それとも僕の新しいパジャマがありますから、我慢してそれを着るとか・・・とにかく高山さん、髪の毛までビショビショに濡れてるんですよ・・シャワーを浴びない手は無いですよ・・・」 美沙も俊一の話がもっともだと思うのでした。雨でずぶ濡れになったみすぼらしい姿を曝し続けるのは苦痛だったのです。 「あのぉ・・・それじゃあ宮田さんのパジャマを貸していただけますか?・・・」 美沙は覚悟を決め、俊一のパジャマを借り、シャワーを浴びることにしたのでした。 「ああ、どうぞどうぞ、それが一番いいですよ・・とにかく体を温めて、着るものを乾かせましょう・・・もし、湯に浸かりたければ湯を張りますが?」 「いえ、シャワーで十分です・・・しっかり温めさせていただきますから・・・」 俊一は買い置きしてあった新しいパジャマを持ってきて美沙に手渡し、風呂場へ案内したのでした。 脱衣所に設置してある洗濯機を乾燥にセットし、洗濯物を入れたらスタートボタンを押すように美沙に言ってから、シャワーのガスを点火してリビングに戻ったのでした。 俊一は美沙があてもなく山中湖まで来て雨に濡れながら歩き続けていたのことがどうしても理解出来ないのでした。何か大きな問題を抱えているとは想像できるのですが、真相は知る良しも無いのでした。 しばらくして美沙が風呂場から出たのが分かった俊一は美沙をリビングに案内したのでした。 俊一のパジャマは美沙には大き過ぎ、胸から胴回りにはパジャマが大きく弛み、下のパジャマの裾を大きく折り返して穿いていました。その姿がまた何とも可愛く、俊一に一気に親近感が湧いたのでした。 「すみません、ドライヤーを貸して頂けないでしょうか・・・」 肩口辺りまで伸びた毛髪を光らせながら美沙が俊一に頼みました。 「あぁいいですよ・・こちらの部屋で使ってください、大き目の鏡もありますから・・・」 俊一が美沙を二つ向こうの部屋に案内しました。 髪を乾かせ、化粧をし直してリビングに戻って来た美沙は更に美人になっていました。整った顔と涼しそうに澄んだ目は男を惹き付ける魅力に溢れ、モデルにしてもいいほどのスタイルの良さがだぶだぶの俊一のパジャマ越しに窺えるのでした。 そこでまた俊一は、こんなに理知的な面持ちの美人が何故あてもなく雨の中をずぶぬれになって歩いていたのか不思議に思うのでした。 「美沙さん、ジュースかコーラを飲みませんか、それともビールにしますか・・お好きなものを言ってください・・・」 俊一は思い切って美沙を姓ではなく名前で呼びました。呼んだ途端に美沙に対して親近感が湧き俊一は美沙をより身近に感じたのでした。 美沙の返事は俊一が想像していたものとは違っていました。俊一は美沙がジュースかコーラを所望すると思っていたのですが、美沙が望んだのはビールでした。 「美沙さんは飲めるんですね!そうか、やはりシャワーの後はビールがいいですよね・・・」 ここでも俊一は驚いたのでした。雨の中をあてもなく歩いていた女性が初対面の男にビールを所望するのはちょっと理解に苦しむのでした。 が、アルコールが入ればよりスムーズに会話が弾むことにも俊一は期待するのでした。 FC2 ブログランキング 人気ブログランキングへ にほんブログ村 |