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兄妹の相愛と歪んだ性行動-p2

秀美はパートタイマーとしての働き口を探したが、幼稚園に通わせている誠一と志保の面倒を見ながら、働き口を探すのは至難であった。
誠一と志保は同じ幼稚園に通わせているが、9時過ぎに幼稚園の送迎バスに乗せ、帰ってくる2時ごろに迎えに出る為には、夜、働ける仕事しか無かった。
清次郎の実家からも甲府に帰って来たらどうだ、と言う誘いが有ったし、秀美の実家からも早く帰って来いと言う強い声があった。が、それぞれの実家は兄が家を継いでおり、家庭を持ち、それぞれ子供が二人いた。そんな環境の中で堅苦しい思いをする事が目に見えていた。
秀美は甲府に帰るのも一つの選択肢だとは思ったが。いつも二の足を踏んでいた。

秀美が悩み続けている時、また、新井修一が午後3時ごろ訪ねて来た。この前来た時から、約一ヶ月後だった。秀美の家には駐車場があったが、車は秀美が売却し、車は無い。その駐車場へ修一は車を入れた。
『東京に来たから、また寄せてもらったよ。清次郎にもお線香を上げたいし・・・・・・』
修一が明るく振る舞いながら、さりげなく言った。
手には米が10キログラム入った袋と、イチゴがぎっしり詰まった箱を2個持っていた。
『これ全部俺のところで採れたもんだけど、みんなで食べてよ』
『こんなに沢山、わざわざすみません。ありがとうございます』
『そんなに頭を下げないでくれよ・・・俺んちで採れたものばかりで申し訳ない・・・・』
修一は清次郎に線香を上げ、長々と黙祷をしてくれた。
『清次郎が亡くなってから2ヶ月が過ぎたが、秀美は何か困ってること無いの?』
秀美の差し出したコークを一飲みして、修一が心配そうに聞いた。
『働き口を探しているんだけど、なかなか難しいのよね・・・・・誠一と志保が幼稚園に通っている間は、仕事を探すのは無理かも知れない・・・』
『そうだろうなぁ・・・時間が制限されるからねェ・・・・』
『夜の仕事だったら、子供たちを寝かせる準備をしてから出かける事も可能だけれど・・・・・』
『夜の仕事って、水商売の事かい?』
『私には水商売は無理。夜のパートタイマーよ。コンビニなんかの・・』
『でも、夜、働くとなると、秀美も疲れるよなぁ・・・・』
『食べて行かなければならないし・・・・子供たちにも我慢を強いる事もできないし・・・・悩むわねェ・・・・・』
『子供たちは今何歳だっけ?』
『誠一が5歳で志保が4歳・・・二人は年子なんだけど、同じ学年なの・・・・今、幼稚園の年少組みだから、来年、もう一年幼稚園に通うの』
『年子で、同じ学年って、そんな事があるの?』
『誠一が4月生まれで、翌年の3月に、志保が早産で生まれたもんだから、同じ学年になってしまったの・・・早産しなきゃぁ、有り得ないわよねェ』
『ああ、そう言う事なの、秀美も子育て大変だったねェ・・・』
『二人が小学校に入れば、私の仕事も見付け易くなると思うんだけど・・・・・・』
『清次郎が生きていたら、秀美がこんな苦労をしなくてもいいのにねェ・・・・秀美が可愛そうだ・・・・』
修一は心底秀美に同情していた。自分が好きだった秀美が、突然不幸に襲われている事が、修一には不憫で仕方なかった。
2階から、誠一と志保が、秀美と修一のいるリビングに下りて来た。
『誠一君と志保ちゃん?・・・こんにちわ・・・』
修一が笑顔を作りながら、明るい声で言った。
『誠一と志保、こちらの方はね、パパとママの高校時代の同級生の新井さんよ・・・二人とも挨拶しなさい』
『こんにちわ』
『こんにちわ』
誠一と志保が口々に挨拶をした。
『はい、こんにちわ・・・二人とも可愛いねェ・・・・』
秀美が修一の持参したイチゴを皿に盛って持ってきた。
『こちらのおじさんがお土産に持ってきてくださったイチゴよ、美味しそうでしょう・・・・誠一も志保も頂きなさい!・・・・修一さんも一緒に食べましょう?』
4人揃って大粒のイチゴを堪能した。

『秀美、困った事があったら、気軽に相談してね?俺は今も秀美の味方なんだから・・・・』

修一はそう言い残して、夕方5時過ぎに甲府に帰っていった。
修一と過ごした2時間あまりの時間は、秀美が常に思い悩んでいる、これからの生活の事を、一瞬忘れさせてくれる時間でもあった。


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